私も子供の時から、父に早く死んで欲しいと思っていた。
私の父は仕事もしないパチンカス。「車で人を轢いた」とか嘘をついて、祖父母や親戚にお金を無心したり、生活費や子供のお年玉、祖父母が内職で貯めたわずかなお金さえも盗ってパチンコに行く。パチンコに行くために何度も借金をする。
お金が調達できなかった時には、パチンコ屋にいるお客に辺り構わず、金を貸して欲しいと聞いて回ったり、床に落ちているパチンコ玉を拾い集めて、店を出禁になったこともあるというなさけなさ。
見た目は浮浪者のようで汚い。歯を磨かないので、前歯は全部虫歯で真っ黒、髪はボサボサ、服はボロボロ。
普段は子供に無関心で、話しかけてくることはほとんどないくせに、たまに口を開けば、傷つくようなことをわざわざ言う。
「なんだその変な服?」「胸でっかくなったな。子供のくせに色気付きやがって、気持ち悪」
遊びに来ていた友達に「お友達デブだね」と、わざわざ言いに来た時は殺意がわいた。
今思うと、アスペなんだろうと思う。
とにかく父親が気持ち悪くて、気味が悪くて、大嫌いだった。
時々、統合失調症の発作を発症し、部屋で勉強していると「お前誰だ!出てけー!!」とか何度も怒鳴り込んできたり、夜中に意味不明なことを大声で叫んだりする。(子供の時は統合失調症とかわからず、ただ怖かった)
母に「お父さん病院行かなくても大丈夫なの?」と聞いても、「お父さんはおかしくありません!普通です!自分の父親をそんな風に言うなんて、お前の頭がおかしいんだろ!!!」とか怒られる始末。
えっ!父親が普通???私の頭がおかしい!?
頭がおかしい父と離婚せずに一緒にいる母も、やっぱり頭がおかしかった。
そんな幼少期を過ごしてきた私が人生で一番泣いたマンガが、あらいぴろよさんの「虐待父がようやく死んだ」です。
私は虐待されていたわけじゃないけど、作者のあらいさんの気持ちに共感しました。
「あんな父親さえいなければ」
「死んで欲しい。いっそ私が殺したい」
「なんでこんなクズと結婚なんかしたんだ」
「なんで離婚しないのか」という母に対する苛立ち、不満、不信感。
それと同時に沸き起こる可哀想な母への同情心。
母は一番の犠牲者であり、私達子供のために働きづめの母を責めてしまう自分の心の小ささ。
母への申し訳なさ、罪悪感。自己嫌悪。
そして何よりも許せない「自分自身に流れる父の血」。
人間としてまともじゃないクズの遺伝子を自分が受け継いでいるという悍ましい現実。
自分自身への嫌悪感。
ストーリーや心情ひとつひとつを自分と重ね合わせて、読むたびに号泣しました。
作者のあらいさんはどんな心境でこの作品を書いたのだろう。
きっと相当な苦しみの中で書かれたんじゃないかと察します。
「親なんだから、子供を心配しない親はいない」
「血の繋がった親子なんだから、話し合えばきっと分かり合える」
私が大っ嫌いな綺麗事を言う人たちも、これを読んだらそんなこと口が裂けても言えなくなる壮絶さ。
現実には、一般論も、常識も一切通じない、人としての心を持たない親もいる。
不条理で、救いがない。
でもそれを作品として公開している勇気に尊敬の念を抱きます。
同じように、親に恵まれずに苦しんでる人の心にこれほど響く言葉はない。
私はただ、普通の幸せが欲しかった。普通のお父さん、普通のお母さんが。
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